読了「蘭陵王」

年末年始の中国旅行で影響を受けたのか、最近中国の歴史物の小説が熱い。先週読んだ「柳絮」に続けて蘭陵王を読んだ。

https://www.amazon.co.jp/蘭陵王-田中-芳樹/dp/4163279008

 

作者は銀河英雄伝説創竜伝で有名な田中芳樹であり、銀河英雄伝説は素晴らしいアニメであったため本小説も期待がもてた。彼の経歴を見てみると学習院大学の博士課程を修了しており、博士に対する尊敬度が高い僕にとっては更に期待を増長することtになった。1952年生まれという時期を鑑みると、大学院の定員も少ない時期であり現在よりも難しかったのではないだろうか?

 

さて本の内容について触れたい。

時代観点

 蘭陵王が活躍した時代は、魏晋南北朝時代の最後にあたり、蘭陵王の死後ではあるが最後は煬堅が随を起こして終わる。「柳絮」は東普の時代であったため、時代としては似ていてその関連も面白いものだった。

 日本では南北朝時代は些末に扱われるが、蘭陵王の時代も周・斉・陳の三国鼎立であり、三国志を同じような時代と言えが、三国志演義のような優れた小説がなかったためか注目度は低い。しかし、歴史的には江南に興亡した六つの王朝は芸術文化面では仏教の流行、貴族文化の隆盛、江南の経済力と生産力の向上など、重要な事実が起きていた。事実、小説内でも仏教について述べられている。そのことについては意義があると思われるし、もっと注目されても良いと思う。因みに柳絮では五斗米道という道教が広まっていたようだ。

 

政治観点

 古代中国の小説を読むと、生死をコントロールすることの難しさと、儚さを感じざる負えない。どの世界でも民主主義が広がり、人権が尊重される前は同じだったとすると、日本でも江戸時代では切り捨て御免があったように、150年前まではそのような時代だったのだろう。それと比較すると現代は非常に安全だし、チャンスもあるだろうということをわかってはいたが、実感する。小説内で登場人物はたくさんいるが、どんどん処刑されているのを読むと強く感じる。

 

物乞い

 高緯(皇帝)が物乞いの前をして憧れるシーンがある。その中で「人生の虚しさをやたらと口にするのは帝王としての義務や責任を放り出す口実にすぎなかった。」という言葉に感銘を受けた。諦めるということは義務や責任を放り出していることに自分はわかっていなかった。

 

 

 

気に入ったフレーズ

「月の気をあびて、身と心を清めよう。でないと、とても眠れない」

「月下の中庭は青白く沈んで、海底のようであった」