書評「経済で読み解く江戸時代」

上念司氏の「経済で読み解く江戸時代」を読んだ。

 

江戸時代は遠くて近い存在

 江戸時代は確かに説明がしにくい。近代以前の近世、昔過ぎないけど近くもない。戦国時代は古い印象を受けるが、祖母が小さい頃には文化文久の人が生きていたと言っており、身近に感じることができる時代とも言える。それだけに文化レベルとしても今と共通している部分もあるだろう。そんな近くなようで遠い存在、そして望郷の憧れを覚えるのが江戸時代ではなかろうか。

 

なぜ江戸時代に興味があるか

 僕は以前から江戸時代の勉強をしたいと思っていた。というののも、260年に渡り大きな戦争をせずにすんだ時代であり、マネジメントとしても気になるためだ。偶然が作用した面も当然あるだろうが、それでもなにかしら秘密があると考えている。長期に渡る組織を作ることは一つのゴールだろう。人を残すのが一流、仕事を残すのが二流、金を残すのが三流と後藤新平は言ったが、組織を残すことも同じく一流であると思う。国家も一組織である以上、残すことができれば同じくくりに数えられる。

 江戸時代を理解する上で重要なのは、徳川家康、そして織田信長豊臣秀吉が与えた影響と社会だろう。中央集権かつ対外政策に積極的、加えて商いにも力を入れていた豊臣政権に疲れ、逆に分権的かつ安定的かつ排他的な政治を徳川幕府は目指した。徳川家康が始めた江戸時代がどのようにマネジメントされていったのか、それを今後勉強したい。

 

結局個人の力ではなく、経済力が戦争の優劣を決める

 特に印象深いことは、薩摩と長州はこっそり蓄財し、その資金をもって武器を購入して明治維新を実現した点。というのも、別書にはなるが織田信長のすごいところは鉄砲を購入できる資金力にあり、楽市楽座をもって圧倒的な資金力が力の決めてだったことだろう。桶狭間のような奇襲は最初しか行わず、あとは資金力にものを言わせて横綱相撲をとったことだろう。実は勝負をしていない。他にも、第一世界大戦ではイギリス>ロシア>ドイツ>フランスの国力であり、結局国力の差が勝敗に結びついたと記憶している。その観点から結局経済力が軍事力の全てであるという仮説があり、英雄談や個人を崇拝するのが好きな人間は多いが、経済力には抗えないのではないかと考えている。反例はあるだろうが、今後この仮説が正しいことを調べていきたい。

 国力が劣っているのに根性のような精神論を振りかざしても結局勝てず、それは歴史が証明している。